パワハラや新型鬱に対応 職場の「心の病」で資格新設

 労働者に増える心の病を労使一体になって防ごうと、弁護士や医師ら一線で活躍する実務家・研究者がスクラムを組み、一般社団法人「産業保健法務研究研修センター」(産保法研大阪市西区)を設立、今年から本格的に活動を始める。パワーハラスメントや新型鬱など、多様化するメンタルヘルス対策に企業が即応できるよう、4月には資格制度も新設する予定だ。
 産保法研は、三柴丈典・近畿大教授(労働法)が、労働者側と使用者側それぞれの立場で活躍する弁護士や、メンタルヘルス対策に率先して取り組む企業経営者、産業医精神科医ら約20人に協力を呼びかけ、平成24年11月に設立した。
 2月に活動の手始めに東京と大阪でセミナーを開催。パワハラが疑われるできごとに見舞われた社員が休職と復職を繰り返した際、企業は解雇できるかどうか−という事例を元に、労使双方の弁護士が法廷さながらに討論し、問題点をあぶり出す。
 一方、新たな資格制度は「メンタルヘルス法務主任者」。対象は社会保険労務士や企業の人事労務担当者らを想定し、職場で応用できる対処法を身につけるため、実践的な講座を開く。メンタルヘルスに関する法務については、一般的な社労士や産業医よりも詳しい体系的な知識の習得を課すという。
 労働者の心の問題を扱う資格・検定試験は10種類以上あるが、精神医療や法務などを総合的かつ専門的に学べる資格が少ないことに着目した。
 独立行政法人労働政策研究・研修機構が23年度に行った調査では、事業所の6割弱が、心の問題を抱える正社員が職場にいると回答。厚生労働省によると、精神疾患で労災を申請した労働者は23年度、1272人に上り、3年連続過去最多を更新している。
 こうした状況を踏まえ、産保法研では企業に対する法務支援も検討している。三柴教授は「メンタルヘルスの不調者が周囲を巻き込んで生産性を低下させれば、貴重な人材が失われる。企業が切り捨てるのではなく、切り分けて成長させるための仕組み作りを支援したい」と話している。
(2013年1月6日 産経新聞