「責任ある地位で心理的負担」 自殺した社員の労災認定

 うつ病で8年前に自殺した川崎重工業(本社・神戸市)の男性社員(当時55)の妻(63)が、自殺を労災と認めないのは不当だとして、遺族補償年金などの不支給処分の取り消しを求めた訴訟の判決が3日、神戸地裁であった。矢尾和子裁判長は「社内で置かれた地位から心理的負担が強まった」と述べ、処分を取り消した。
 原告側代理人の松丸正弁護士(大阪弁護士会)は「時間外労働の量ではなく、ポストの重要性から生じた心理的負担を労災と認めた判決は珍しい」と話している。
 判決によると、男性は1998年1月、鉄道システム受注のために新設された部門で見積もりなどを担当するグループの責任者に就き、韓国での400億円規模のプロジェクトに取り組んだ。しかしプロジェクトは不調に終わり、うつ病で02年5月に自殺した。神戸東労働基準監督署は自殺と仕事の間に関係は認められないとして、労災と認定しなかった。
 判決は、男性が当時、すべての案件を把握しなければならない重い立場にあったと指摘。「受注できない状況が心理的負担を与えていたと認められる」と判断した。
 判決後、妻は「本人の弱さから自殺したのではないことが認められ、名誉が守られたことに感謝している」と話した。兵庫労働局の安倍良彦労災補償課長は「判決の詳細を把握していないのでコメントできない」との談話を出した。
(2010年9月4日 朝日新聞