中小企業のメンタル対策、地域の医師連携 厚労省

 メンタルヘルスの専門ケアが十分でない中小企業の従業員向けに、検診や治療を受けやすい仕組みづくりに厚生労働省が乗り出す。地域ごとに組織をつくり、職場の健康管理を担う産業医精神科医の連携をはかる。厚労省の担当者は「少ない精神科医を有効に活用できる仕組みにしたい」と話す。
 労働安全衛生法は、従業員50人以上の企業などについては、産業医を決めるよう規定。産業医は職場での健康管理などに関する知識を持つが、全員がメンタルヘルスの専門知識があるわけではない。大企業と異なり精神科医らによる検診などもそれほど行われておらず、中小企業の従業員のメンタルケアが課題になっている。
 厚労省が検討している新たな仕組みでは、医師会や健康診断を行っている病院などを中核として「登録産業保健機関」を設立。機関には産業医のほか、精神科医らメンタルケアの専門家らが加わることを想定している。
 各中小企業は同機関と契約を結び、健康診断などは産業医が担当する。診断で鬱病の症状が見つかるなど専門的な診断・治療が必要と判断された場合、産業医が同機関に登録している精神科医を紹介し、治療が行われる。
 同機関に窓口が一本化されることで、企業側は新たに精神科医を探す手間が省け、従業員もケアを受けやすくなるメリットがある。
 こうした仕組みを実現するためには、労働安全衛生法の改正が必要で、同省は早ければ次の通常国会中の改正案提出を目指し、制度の細部を詰める。
 職場のメンタルヘルスをめぐっては、来年度にも定期健康診断に合わせたメンタルチェック制度が企業に義務づけられる見通し。新たな仕組みは、メンタルケアの重要性が増していることを踏まえ検討された。
(2011年1月14日 日本経済新聞