労災認定:休養期間後死亡に労災、東京地裁が初認定 不支給取り消し命令 /埼玉

◇退職半年後、くも膜下出血
 レンタルビデオ店に勤務していた男性(当時27歳)の死亡をめぐり、吉川市に住む母親が過酷な勤務による過労死だったとして、国に対して足立労働基準監督署の労災不支給決定を取り消すよう求めた訴訟で、東京地裁(青野洋士裁判長)は18日、国に決定の取り消しを命じた。男性は退職後約半年で死亡しており、原告側弁護士によると、休養期間を経て死亡したケースで過労死と認められるのは初めてという。
 死亡したのは、矢田部暁則さん。98年、レンタルビデオ店を運営するクオーク(東京都豊島区)に入社し、東京や埼玉の店に勤務していた。矢田部さんは同社を退職した半年後の00年9月、くも膜下出血で死亡した。
 母和子さん(70)は死亡は過労が原因として、遺族補償給付と葬祭料の支給を請求したが、足立労働基準監督署は03年6月、不支給の決定をした。
 判決は、99年6月以降の1カ月当たりの時間外労働時間が80時間を超えていたとして、「量的にも質的にも著しく過重だった」とし、くも膜下出血の原因となった脳動脈瘤(りゅう)の形成と、業務との因果関係を認めた。
 矢田部さんは退職してから3カ月後に別会社に再就職した。被告側は「再就職するまでの不就労期間が約3カ月あり、疲労は回復した」と主張していたが、判決は「悪化した脳動脈瘤(りゅう)が、疲労解消によって回復するとは認められない」と退けた。
 和子さんと、父敏夫さん(68)は19日、弁護士とともにさいたま市内で会見し、「いい判決でうれしい」と心情を語った。
 和子さんは「(暁則さんは)会社に勤め始めて、食事もまともにとらなくなった。朝方近くに帰宅し、顔を合わせることも減った」と当時の様子を語った。敏夫さんは「過労死や過労自殺は今でもたくさん起きている。息子の事件が再発防止につながってほしい」と訴えた。
 判決について足立労働基準監督署は「判決内容を検討した上で対応を考えたい」としている。
(2011年4月20日 毎日新聞