労災に新基準 時間外労働、月160時間超

 長時間労働など仕事が原因で精神疾患になった場合の労災認定について、厚生労働省の専門検討会は8日、認定につながる心理的負荷(ストレス)の具体的事例を示した評価表などを記載した報告書を公表した。報告書を基に認定基準を見直し、年内にも全国の労働局に通知、新たな基準による労災審査を始める。
 精神疾患が原因の労災請求件数は、平成10年度に42件だったが、22年度には1181件にのぼり、近年大幅に増加。審査に平均約8・6カ月かかっており、審査期間を早める必要が出てきたことが基準見直しの背景にある。厚労省は見直しで審査を約6カ月に短縮できるとしている。
 報告書では、精神疾患につながる具体的なストレス強度を「強」「中」「弱」の3段階に分類。それぞれ具体的事例を示し、「強」と判断された事例は、その事実だけで基本的に労災が認められることになった。「中」の事例についても、複数の事例が重なった場合などは総合的に判断し、労災認定される。
 長時間労働は、これまで具体的な時間が示されていなかったが、今回は時間外労働時間で明示。1カ月で160時間以上▽3週間で120時間以上▽連続2カ月間で1カ月当たり120時間以上▽連続3カ月間で1カ月当たり100時間以上−などを「強」とした。
 このほか、急に仕事量が変化して労働時間が増加、1カ月に100時間以上の時間外労働となり、その後も業務に多大な労力を費やしたケースも「強」。1カ月で80時間以上の時間外労働や、2週間以上の連続勤務などは「中」とした。
 業務上のストレスは「悲惨な事故や災害を体験、目撃した」「重大な仕事上のミスをし責任を感じた」「達成困難なノルマを課せられた」「転勤した」「業務に関連し違法行為を強要された」など具体的な事例を示し、ストレス強度を設定した。これまで「対人関係トラブル」の一つだったセクハラは独立し、強姦(ごうかん)やわいせつ行為に加え、胸や腰などへの継続的な身体接触などもストレスは「強」とされた。
(2011年11月9日 産経新聞